
プロジェクト概要
プロジェクト名:札幌コンベンションセンター[Sapporo Convention Center]
都市:札幌
建物用途:コンベンションセンター 延床面積:約20,000㎡
認証システム:LEED v4.1 O+M:EB
認証取得日:2025年11月26日
認証レベル:ゴールド
インタビューを受けた人:桝田 安志
札幌コンベンションセンター マネージャー、
株式会社コンベンションリンケージ プロデューサー
インタビューした人:宮崎 淳 GBJ コンテンツWG
宮崎:まず、札幌コンベンションセンターの全体概要を教えてください。
桝田:札幌コンベンションセンターは、国際会議、学会、展示会やパーティーなどが開催可能な総合型コンベンションセンターで、2003年に開業しました。延床面積は約20,000㎡で、大ホール、特別会議場、中ホール、小ホールと15の会議室等で構成されています。メインホールとしての役割を持つ大ホールは、広さが約2,600㎡となっており、最大2,500人が収容可能なほか、立食パーティーや展示会などの様々なイベントにも対応できるフレキシブルな機能を持っています。

宮崎:施設の稼働率はどのくらいですか?
桝田:稼働率は高いです。全館貸切で国際会議や学会が開催されることもあれば、会議室だけが使われる場合など、いろいろな使い方で利用されるので一概には言えませんが、大ホールだけでみても、年間で約80%稼働しています。全く利用のない日はほとんどない状況です。
宮崎:人気の高い施設ですね。次に、施設の所有者と運営者の関係について教えてください。
桝田:施設の所有は札幌市です。管理運営業務を担っているのは、SORA-SCC共同企業体で、代表団体が株式会社 コンベンションリンケージです。2010年から管理運営の業務を行っており、17年目になります。

宮崎:LEED認証の取得を最初に提案されたのは、建物所有者側ですか?それとも運営者側ですか?
桝田:この施設では、LEED認証の前にGBAC STAR認証(Global Biorisk Advisory Council)という感染症対策の国際認証を取得していました。札幌市がLEED for Cities認証を取得していることもあり、札幌市から打診頂きました。
その打診を受けて、取得可能かどうかの検討を行い、LEED認証を取得することとしました。欧米圏では多くのコンベンション施設がLEED認証を取得していますが、国内では取得しているところがまだなかったので、施設のブランド力が上がるのではないかと考えました。また、国際会議を札幌に誘致したいとも考えていますので、LEED認証を取得していることが、他の都市にはない強みになることも期待しました。
宮崎:国内において「初」と呼ぶことができるLEED認証取得の事例が限られる中、「日本の既存MICE施設で初となるLEED O+Mゴールド認証」を取得したことは、訴求力が高いと思います。
桝田:LEED認証の取得を決定したのが2023年でしたので、約3年前になります。ちょうど、その後に大規模改修を計画しており、空調設備を全面的に入れ替える予定だったので、LEEDの必須項目への対応も改修工事に取り込み、改修工事後1年間の運用実績データに基づき、LEEDの申請を行いました。

宮崎:LEED認証取得のために、改修工事が必要となったどのような項目でしょうか?
桝田:国内の建築基準法では外気導入の必要がない特殊な廊下や小さな部屋で、LEEDで必要な給気量がとれていないところがあったので、近くの給気ダクトから分岐して、給気量を増やす工事を行いました。また、LEEDを取得することとは別に、省エネ化の推進を目指して設備導入を行いました。太陽光発電設備の設置と照明のLED化はすでに完了していたので、窓への遮熱フィルムの設置、空調機器の高効率化等を行いました。
宮崎:LEED認証取得にあたって、特に苦労されたところはどんなところでしょうか?
桝田:ASHRAE基準に準拠しなければならない、というのが大きなハードルでした。認証取得のために、一項目ずつチェックを行いました。また、コンベンション施設特有の問題なのだと思いますが、いろいろな使われ方をする施設なので、来館者の人数の変動が日によって大きく、空調機の稼働の仕方も施設の使い方によって違うので、エネルギー消費量の変動が非常に大きい施設となっています。この施設が、必須項目である「最低限のエネルギー性能」を満たしているかどうかを確認するためには、年間の来館者数を滞在時間も考慮したうえで集計し、年間のエネルギー消費量から建物エネルギー性能を算出する必要があり、それが大きなハードルでした。年間の集計を行い、この施設のエネルギー性能が、「最低限のエネルギー性能」を満たしていることが確認できた時は、胸をなでおろしました。

宮崎:LEED認証取得にあたっては喫煙室が問題になるプロジェクトが多いのですが、この施設では問題になりませんでしたか?
桝田:この施設はもともと敷地内が全面禁煙になっていて、敷地内に喫煙室を設けていないため、喫煙が問題になることはありませんでした。
宮崎:今回、O+Mの認証でGOLD認証を取得されたとのことですが、Arcを使っての認証でしょうか?
桝田:Arcを使っての認証でした。LEED認証取得のためにArcを始めました。
宮崎:LEEDの認証取得が、役に立っていることはありますか?
桝田:札幌コンベンションセンターは「内外の優れたコンベンションの開催の場を提供する」(札幌コンベンションセンター条例より)ことを目的に建設された施設です。最近、誘致において、どのようなサステナブルな取り組みを行っているのかを、主催から(特に国際団体)聞かれることが増えてきています。まだ、認証を取得して1年も経っていないので、LEED認証のおかげで会議が決まったという例はありませんが、現在、国内でLEED認証を取得しているコンベンションセンターはこの施設だけなので、是非それを売りにしていきたいと考えています。
また、今回のLEED認証取得をきっかけに、5月26日~28日に札幌コンベンションセンターで開催された「第63回日本伝熱シンポジウム」において、特別講演の講師として登壇する機会をいただきました。講演では、LEED認証取得に至る取組をはじめ、環境配慮型施設運営の具体的な実践事例を紹介し、札幌コンベンションセンターの先進的なサステナブルMICEの取組を広く発信することができました。

宮崎:施設の運営をされているコンベンションリンケージさんにお聞きしたいのですが、御社が運営されている別の施設で、LEED認証の取得を検討されているところはありますか?
桝田:今のところまだありませんが、施設を保有する自治体に認証取得を提案している例はあります。国際的な会議を誘致するコンベンション施設としてのブランド力を高めるのに、LEED認証は役立つと考えています。
宮崎:LEED認証取得以外にも、札幌コンベンションセンターでは様々なサステナブルな取り組みをされているようですね。
桝田:屋上に設置した太陽光発電設備により、施設の年間消費電力の約10%を自家発電でまかなっています。残る約90%についても、札幌市と稚内市が連携し、稚内市のメガソーラー発電所で発電された電力と札幌市の水力発電所による電力を組み合わせた「電力の地産地消」に取り組むとともに、再生可能エネルギー100%の電力を調達しています。これにより、施設全体で実質的な年間CO₂排出量ゼロを実現しています。
宮崎:札幌市も先進的な取り組みをされていますね。
桝田:もともと札幌市は、2008年に「環境都市・札幌」を宣言して、持続可能なまちづくりを積極的に進めている都市です。また、国際会議等のMICEの誘致にも力を入れており、「サステナブルなMICE開催のためのガイドライン」という指針を策定して、都市全体でサステナブルMICEを推進しています。札幌コンベンションセンターは、このガイドラインに従って、会場の運営を行っていますし、会場由来のCO2排出量ゼロでサステナブルなMICEを開催することができる施設であることもアピールしていくことができると思います。今後も札幌市と協力して、競争力のあるサステナブルなMICE運営に取り組んでいきたいと考えています。
宮崎:札幌コンベンションセンターと札幌市の先進的なサステナブルな取り組みと、LEED認証と共にサステナブルなMICE開催を活用してコンベンション誘致に取組まれていることがよくわかりました。本日は、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
英語版は準備中

