第66回セミナー[講師の音声付資料]ここまで進化したESG投資とGRESB:サスティナブル金融・不動産の最新動向を知ろう

 

第66回GBJセミナー

 

ここまで進化したESG投資とGRESB:サスティナブル金融・不動産の最新動向を知ろう

2021年12月15日(水)オンライン開催

<募集時セミナー案内はこちら>

 

金融・不動産に関するGBJセミナーではおなじみの両講師、タイトル名にたがわぬサステナブル金融・不動産についてまさに「最新動向」をお話しいただきました。サステナブル会計基準の統一化の動き、GRESBへの参加企業のさらなる増加、さらにハイブリッド自動車を未達成と「分類」するEUタクソノミーの規定が不動産にもおよぶ状況が概説され、アンケートでは「取り残されてはいけないと危機感を感じた」という声も。11月に開催されたGBJシンポジウム、GRESBセミナーの復習・解説編としても有益なセミナーとなりました。

 

講師:木下 泰

    GBJ共同代表理事、Eminence Partners合同会社 代表社員

   高木 智子

    CSRデザイン環境投資顧問株式会社 執行役員 パートナー

司会:大村 紋子

    レンドリース・ジャパン株式会社 シニア・プロジェクト・マネージャー

 

 

 

 

1. ESG投資,Q&A  木下 泰

 

 

2. GRESB,Q&A  高木 智子

 

 

3. パネルディスカッション

 

 

 

4.  Q&A

Q1. ISSDへ枠組み一本化によって、日本もこの枠組みに乗っかるのでしょうか?

 

木下氏:そうです。IFRS FoundationがVRFを飲み込む形でISSDを立ち上げ世界的枠組みについて一本化の目途が見えてきています。日本も会計に関しては原則IFRSに則ることをしているので、ISSDの枠組みによって動いていくことになる公算が高いです。

 

Q2. ISSDは立ち上がったばかりのようですが、開示方法についてはまだ具体的な基準はできていないという理解で良いですか?

 

木下氏:乱立していた基準の統合、ルール作りが最終段階に向かっていくところでしょう。日本特有のルールについての意見発信も今が大事な時期だと考えます。EU等先を行く諸国は自らの都合に良い枠組みを作りたいので先陣を切って様々な主張を展開しています。

 

Q3. GBJシンポジウム基調講演で村上さんはESG投資のことを、社会的インパクトを重視して利益は低くても仕方がない、というのではなく、ESG投資は「もうかる」ビジネスになる、と言われていましたが、そういうスタンスだと短期的なリターンを重視しがちになりませんか?

 

木下氏:ESG投資はチャリティーではないというのは、大前提です。おそらくESG投資のリターンが短期的に出るという意味ではなく、ESG投資によってさまざまなビジネスが立ち上がってくることによる影響を言いたかったのではないでしょうか。周辺ビジネス機会が増えるということです。ESG投資は短期的に狙うのは、難しいです。中長期的なリターンを狙っていく投資家年金基金や生命保険などが行うことに適しています。短期的なリターンを得ると、短期的な投資を繰り返さなくてはならないので、お金の質が違います。短期的に儲かる大穴は何度も連続して続くものではないです。
社会的インパクト投資は、社会としてのリターンの考え方(社会的なインパクトを投資リターン測定にどのように含めるのか)がまだ定まっていません。一方ESG投資は純粋な投資としてマーケットで一定の結果が出ています。

 

Q4. GBJシンポジウムのパネルディスカッションでJPモルガンの方が「フェアであってほしい」と言われていました。ESGを先陣を切って推進して行けば先行者利益を得られる、とも限らず、逆に「バカを見る」という可能性もあるのでしょうか?

 

木下氏:中長期的な投資と短期的投資の違いが、理由としてあるのだと思います。一般的な投資家がESGを気にせず短期的な投資をしている横で、コストをかけて中長期的な投資をしていることがつらい時期があるかもしれません。しかし、ESGを強く意識している機関投資家が動かしているお金は大きいので、必ずマーケットが付いてくるでしょう。

 

高木氏:GRESBで評価を受ける側としては、先行者利益があるのではと思っています。年々対応すればよいことの理解が進み、得点が上がっていくからです。参加したばかりのときは、1スター、2スターから始まってしまうことが多いです。

 

Q5. 組織と物件で階層が違いますが、長期的に見た場合、GRESBの評価が高い組織のLEED認証建物と評価が低い会社のLEED認証建物に差が生まれる可能性はありますか?

 

高木氏:GRESBでは、LEEDなどのグリーンビル認証を、ポートフォリオの何%の床面積で取っているかが問われます(なお、認証のレベル(Certifiedやプラチナ)で評価は変わりません)。よって、LEEDなどのグリーンビル認証をたくさん取得していれば、GRESBの評価は高くなりますが、GRESB評価の結果がLEEDのレベルや建物の水準に直結することはありません。

 

Q6. ありがとうございました。先ほどの私の質問は、所有者のGRESBの評価により建物の資産価値に差が生まれますでしょうかという意味です。わかりずらくてすいません。

 

高木氏:あまり明確にはないと思います。DBJ Green Building認証はGRESBで問われる内容を意識した評価項目もあり、GRESB参加で培ったものが効いて、その認証有無が資産価値に影響する可能性はゼロではありません。また、主戦場(既存投資物件)ではないが、GRESBのディベロップメント・コンポーネントという新規開発・大規模改修の取組みを聞く部分ではLEEDが設問の下敷きになっているので、LEEDに取組んでいる会社はGRESBでも高いスコアを取りやすいとは思います。

 

Q7. 他のグローバルのESG指標や評価基準がある中、GRESBが不動産金融業界に特化している項目などがあればお教えいただけますでしょうか?

 

高木氏:他のESG評価に比べて、GRESBでは評価項目が細かく、不動産セクターに特化しています。例えば、物件でのLEEDやBEMSなどの取り組みも、ポートフォリオレベルに丸められはするが評価対象になります。また、エネルギー・GHG・水・廃棄物のデータや、グリーンビル認証の有無などは物件ごとを細かく報告します。他のESG評価はそこまでは聞きません。またその他のESG評価は開示情報しか見ないものがほとんどですが、GRESBは参加者が回答したものを評価するので、公開データではないデータも含めて評価しています(よって、上場の会社のみでなく、非上場のファンドなども同じ土俵で比べられます)。

 

Q8. GRESBインフラストラクチャーではどんな種類のインフラを扱う会社・ファンドが多いのでしょうか。割合などはあるのでしょうか。

 

高木氏:データ公開ページを紹介します。日本からは、ほぼ再エネの会社しか参加していませんが、グローバルでは交通と再エネが多いです。ソーシャルインフラの中には、例えば図書館、刑務所などもあります。
https://gresb.com/nl-en/2021-infrastructure-assessment-results/

 

Q9. GRESBデベロップメント・ベンチマークについて、新規開発、大規模改修に関するベンチマークを創設した理由を教えてください。LEED NDやNCなどでの代替はできなかったのでしょうか?交通、敷地選定、室内環境などの評価は入っていない?

 

高木氏:設問項目はLEED NCに近いです。しかし、GRESBは投資家目線のため、各物件ではなく、ポートフォリオ全体としての取り組みを評価します。すなわち、気にしている項目は同じだが、GRESBの設問は比較的定性的でざっくりとしています。交通は敷地選定の中の1選択肢として問われています。室内環境もどのような施策をしているか選択肢での回答箇所があります。

 

Q10. EUタクソノミーの影響は、日本にもおよんでいますか?

 

高木氏::EUの投資家が日本のマーケットを見たときに、EUタクソノミーを満たしている物件はどの程度あるのか?という質問が来ることは想像できます。その際に「NZEBの一次エネルギー消費の要件より少なくとも10%少ない」という要求事項を現在の日本のNZEBの定義で解釈すると、満たしている物件はJ-REITなどでは残念ながらないだろう、というのが日本の実情です。その他にも最低要件のホルムアルデヒド放出量が日本の基準と違うために生物多様性の要件の日本での読み替えが不明だったり、日本では何が該当するのか、という読み替えは公的機関が音頭を取ってすべきです。

 

木下氏:そのせいで、Japan passingが起きることを懸念しています。日本も大きなマーケットを持っているのだから、国際的な場で意見をしていくべきです。

 

Q11. 日本の不動産がやっている取り組みが結果としてグリーンウォッシュとなってしまうのか?

 

パネルディスカッションでは、本編を踏まえた、さらに深いお話が次々と飛び出します。気になる方は、ぜひパネルディスカッション動画をご覧ください。

 

関連記事