気密性能

第65回GBJセミナー この手があった！省エネ＆健康なオフィスへ ～CLT建築で実施した気密性能試験の事例紹介～ 2021年8月2日（月）オンライン開催 &lt;募集時セミナー案内はこちら&gt; 当日は60名を超える参加者がありました。実際のプロジェクトの様子を、たくさんの写真や時には手書きの図面を交え、気密性能試験のプロセスである、「エアバリアの連続性」や「ブロアドアテスト」といった専門的な内容をかみ砕いてお話いただきました。セミナーの最後のQAでは実際のオフィス居住者の方から、その快適性や省エネ性を語るひとコマもあり、気密性能試験が机上の空論ではなく、効果は実感を伴うものであることが分かり、「銘建工業のオフィスを体感したい」と大人気に。 アンケートにも、「新たな概念を得た」「もっと勉強したい」「クライアントへも提案してみたい」などと期待を感じられました。 講師：佐藤 寛之 （NKS2アーキテクツ） 長谷川 高士 （クラウン防災） 大村 紋子 （納屋） all 全編 1. 佐藤 寛之 （NKS2アーキテクツ） 2. 長谷川 高士 （クラウン防災） 3. 大村 紋子 （納屋） 4. Q&amp;A 会員向けにQ&amp;Aを公開しています。ログインしてご覧ください。 ここからは会員のみに表示されています。 Q1. 気密性能は平方ｃｍ／平米等の、単位で表現されますか。当該建物の値はおいくつでしたか。またASHRAEの基準はとのような値でしょうか。 長谷川さま Blower Door Testのパートで説明します。 講師補足解説はこちら Q2. 日本の一般的な住宅程度でのBDTの結果はどの程度になるのでしょうか。実例があればご教授いただければ幸いです。 ASHRAE Standard半分以下であっても不思議ではないです。 講師補足解説はこちら Q3. Blower Door Testの実施にはアメリカの資格が必要だったりするのでしょうか？ 資格が必要で、その（資格の）維持も必要です。 Q4. 日本で一般的でない北米規格のドアファンテストを手掛けるようになったきっかけがあれば教えてください。或いはライセンス？を取るまでに苦労されたことがあれば教えてください。 1995年にアメリカとカナダを訪問し、素晴らしい建材や高い機密性能に驚いたのがきっかけ。一般住宅の気密性能から始め仕事は一つも来なかったが、データセンターなどでガス消火設備の為のドアファンテストを2003年頃から始めました。 ライセンスは筆記試験と実地試験がある。筆記試験は何とかなるが、実施試験は実際に自分でBlowerを購入し、一定規模以上の2つの建物で自分でテストをし、レポートを書くというものでかなり難しいです。 講師補足解説はこちら Q5. 気密性は設計・施工含め，多大な配慮の元，確保されていると理解しました。空気質の確保の点では，併せて換気も重要なポイントになるかと思いますが，換気もASHRAE Standard 62.1のオフィスビルの標準値Vbz＝8.5L/s人をクリアしている形となっているのでしょうか。 ASHRAE Standardでの計算は行っていませんが、外調機のサイズが大きく4,500㎥/hの新鮮空気を導入していますので十分と考えています。在室人数あたりでは一般的なオフィスの日本の基準での推奨換気量の約2倍です。 Q6. 温湿度に関するアンケート結果・銘建工業様のご意見は高い断熱性能によるとの印象を受けます。気密性能の貢献度を計測する手段などないでしょうか。 空気質のアンケートで埃っぽさがほとんど無いというのが貢献度ではないかと考える。気密性能だけを切り出して貢献度を計測するのは難しいです。 講師補足解説はこちら Q7. 北米の大型建築物では、日本と異なり、内装下地材の裏側にまったく気密フィルム工事はせず、外装通気胴縁下でのエアバリアのみで完結をさせるのでしょうか。内装側でまったく気密面を設けなくてもよいと、言う考えでしょうか。 非常に抵抗があると思うが、北米の常識は透湿防水シートではなくVapour Barrier。壁内結露の原因は水蒸気が透過すると考えるとイメージしやすいです。 講師補足解説はこちら Q8. 湿度の高さで考えると、住宅はvapour varior が必要かもしれないと思いましたが如何でしょう 使用しません。 講師補足解説はこちら 講師補足解説 Q1. 気密性能は平方ｃｍ／平米等の、単位で表現されますか。当該建物の値はおいくつでしたか。またASHRAEの基準はとのような値でしょうか。 ASHRAEの基準は75Pa時のm3/m2/ｈで表現されます。漏気量（75Paに加圧した時の、一時間当たりの漏気量）を外皮面積（空調空間と非空調空間を隔てる面の総合計＝床面＋外壁4面＋屋根）で除した数値です。今回のテスト結果の評価は、配布資料で確認願います。 (補足１ C値との比較) 日本のC値は、10Pa時の隙間総統面積（EqLA10Pa）を延床面積で除したものです。ASHRAE基準との単純な比較はできません。添付の変換表を参照願います。 （補足２ 75Paという差圧の意味）ASHRAEの75Paは、漏気量を測定する際に使われる実際の差圧です。比較的に大きな差圧が用いられる理由は、大規模建築物は大きく自然風の影響を受けやすいためです。風が吹くと、ブロアを動かさなくても内外差圧は±10Paを超えることがめずらしくありません。つまり、低い差圧ではテストができないのです。1970年代に行われたG. T. Tamuraの試験も＋75Paの差圧が設定されました。 （補足３ EqLA10Paの意味）隙間面積が分かっている空間があり、そこに、10㎝角の正方形の穴を一つ加えて気密を測定するとします。その結果をEqLA10Paというルールで表現すると100㎝2分が増加します。同じ穴をEqLA75Pa、EfLA4Paで表現すると、数値が変わってきます。 Q2. 日本の一般的な住宅程度でのBDTの結果はどの程度になるのでしょうか。実例があればご教授いただければ幸いです。 配布資料の換算表を参照してください。原典はRetrotec社です。 以下をご理解ください。 ① 単位がバラバラであること。これは各国がバラバラに研究をした結果です。原理はシンプルなので各国の研究者が功名を競った、或いは、他国の事情を気にしていられないほど各国の事情が切迫していたのかもしれません。 ② ACH（Air Change Rate Per Hour）はかつてよく使われた表現方法であること。分子が風量(例えば50Pa時の漏気量)、分母が容積です。採用する国やスタンダードが減っているようで、この表ではパッシブハウスのみが採用しています。 ③ 日本以外は、分子に風量を使っていること。風量は実測した生に近いデータです。日本は面積（EqLA10Pa）を使っていますが、この値を得るためにはいくつかの前提に基づいた計算が必要になり、生データとの懸隔が生じます。 ④ 日本以外は、分母に外皮面積を使っていること。日本は床面積（計算ルールあり）を使っています。 ⑤ 日本の数値を他の表現方法に変換するのは難しい理由は、③④の通りです。 ⑥ 複数の気密性能の表現方法の、どれか一つが絶対的に正しいということはないこと。例えば、「隙間は外皮にあるから分母を外皮面積にするべきだ」というのは正論に見えますが、床・屋根と外壁が同質だとは考えられません。隙間はむしろ、面と面との接合部に発生します。またACHにも問題があります。数値が同じでも住宅と大規模体育館とでは性能が違ってくるはずです。もっともパッシブハウス並みに厳しくしてしまえば、話は別です。 以上をご理解の上、換算表を見てください。 日本のC値（延べ面積60坪程度の住宅を想定）をASHRAE基準に換算した場合、C値１㎠/m2は1.98m3/m2/h75Pa、C値２㎠/m2は 4.14 m3/m2/h75Pa、C値5㎠/m2は10.26 m3/m2/h75Paとあります。比例していない理由は、Retrotecの換算表から私がさらに換算して得た数値だからです。しかし、目安にはなると思います。 最近の住宅ではC値１というのは珍しくないと聞いています。ASHRAE要求の１/４となり、かなりの高気密だということになります。コスト高（収益の圧迫）が気にならなければ、今のところ、問題はないと思います。但し気になるのは、日本の住宅の場合、ポリシートで気密化を図っている点です。この点については別欄でコメントします。 Q3. Blower Door Testの実施にはアメリカの資格が必要だったりするのでしょうか？ 資格が必要で、その（資格の）維持も必要です。 Q4. 日本で一般的でない北米規格のドアファンテストを手掛けるようになったきっかけがあれば教えてください。或いはライセンス？を取るまでに苦労されたことがあれば教えてください。 1995年にアメリカとカナダを訪問し、素晴らしい建材や高い気密性能に驚いたのがきっかけ。一般住宅の気密性能から始め仕事は一つも来なかったが、データセンターなどでガス消火設備の為のドアファンテストを2003年頃から始めました。 ライセンスは筆記試験と実地試験がある。筆記試験は何とかなるが、実施試験は実際に自分でBlowerを購入し、一定規模以上の2つの建物で自分でテストをし、レポートを書くというものでかなり難しいです。 Q5. 気密性は設計・施工含め，多大な配慮の元，確保されていると理解しました。空気質の確保の点では，併せて換気も重要なポイントになるかと思いますが，換気もASHRAE Standard 62.1のオフィスビルの標準値Vbz＝8.5L/s人をクリアしている形となっているのでしょうか。 ASHRAE Standardでの計算は行っていませんが、外調機のサイズが大きく4,500㎥/hの新鮮空気を導入していますので十分と考えています。在室人数あたりでは一般的なオフィスの日本の基準での推奨換気量の約2倍です。 Q6. 温湿度に関するアンケート結果・銘建工業様のご意見は高い断熱性能によるとの印象を受けます。気密性能の貢献度を計測する手段などないでしょうか。 気密性能だけを切り出して貢献度を計測するのは難しいです。 空気質のアンケートで埃っぽさがほとんど無いというのは貢献度のひとつと考えます。 外皮の気密性能なしには外調機換気方式による効果的な温湿度調整と陽圧確保は難しく、快適性とエネルギー効率が低下していたと考えます。 Q7. 北米の大型建築物では、日本と異なり、①「内装下地材の裏側にまったく気密フィルム工事はせず」、②「外装通気胴縁下でのエアバリアのみで完結をさせるのでしょうか。内装側でまったく気密面を設けなくてもよいと、言う考えでしょうか。」 銘建工業新本社の実施例ではなく北米の大型建築物に関する質問ですので、長谷川さんより、質問を二つに分けてお答えします。 ① 「内装下地材の裏側にまったく気密フィルム工事はせず」の部分に関して ⇒まず、回答はYesです。これは重要な質問です。以下、ご説明します。 北米に限りませんが、北米の用語で説明すると、内装下地材の室内側にポリシートを含むVapor Retarder（以下、VR 防湿性能別にクラスⅠ～Ⅲまでがあり、クラスⅠVRをVapor Barrierと称する）を施工するケースがあります。屋内プール、博物館資料室、データセンターなどの水蒸気圧が高い部屋がその対象です。 それ以外の場合、連続したABには、可能な限り強いVapor Retarderの使用を避けることが基本ルールになっています。 因みに全てのVapor RetarderはAB性能を有していますからABは、クラスⅠVR クラスⅡVR クラスⅢVR 非VR の４種類に分かれます。タイベックは４番目の非VRに属します。 ルールとは、VRの必要がなければ非VRを使う。クラスⅢで済む場合はクラスⅡを使わない、クラスⅡで済む場合はクラスⅠの使用を避けるというものです。 典型的には、屋根には「クラスⅠ防水素材」、壁には「非VR素材」、基礎は「クラスⅡ現場打ちコンクリート」を用い、それらを繋いで連続したABを達成するということです。一番いけないのは、非連続性です。漏気量が想像を大きく超えることは、Quirouette論文の発見です。 気密性が絶対である建物を被服とのアナロジーで論じることは難しいのですが、透湿性が異なる素材をまとうというイメージを共有するため、敢えて書くと以下のようになります。 山歩きをする際に、透湿性の高いゴアテックスのウインドブレーカーを着ると快適です。靴も帽子もゴアテックスで固めると良いのですが、高額になります。予算がなければ頭と足部分はゴム素材でも我慢できます。もちろん靴底には強力なクラス１VR（＝VB）が必要です。上述のルールのイメージがこれです。 2000年ごろまでは、北米においてもポリシートが多用されていました。しかしそれが減って現在では、メインストリームからは完全に外れています。これは大型建築物に限らず、住宅でも同じです。その意味で、「内装下地材の裏側にまったく気密フィルム工事はせず」 という表現は間違っていません。 ② 「外装通気胴縁下でのエアバリアのみで完結をさせるのでしょうか。内装側でまったく気密面を設けなくてもよいと、言う考えでしょうか。」⇒ 大量の壁内結露発生を防止するためには、閾値を上回る精度の連続したABが必要です。そうでなければ省エネとはかけ離れた建物にもなります。従って、ご質問を「外装通気胴縁下でのエアバリアで、連続したABを完結させることが出来るなら、内装側で（無塗装ALCやCBなどの）気密性能の低い素材で仕上げても大きな問題は発生しない」と言い換えれば、それは良いということになります。 ABの位置は一貫して外部で維持しなければならないとは限りません。 例えば、1階が屋内プール、2階が事務所、その上が屋上であるS造建築物を想像してください。とりあえず外壁断面には二つの解決法が考えられます。 その１ 1階は上述①のようにVB（例えば0.15㎜厚ポリシート）を「気密良く」施工します。VBをABとして兼用させるわけです。2階には、例えばタイベックシートを断熱材の外側、通気層の内側に施工するとします。 １階のVBはコンクリートの基礎に接続します。1階VBと2階のABも接続します。そして2階のABと屋上のVBも接続します。 1，2階の移動部分で、断熱材を挟んでABの位置が変わるだけでなく、素材も変わります。施工が難しいのですが、連続性が必須です。非連続部分からは漏気が発生し、水分が移動し、壁内結露危険が発生するからです。1階の水蒸気圧は超高いわけですからなおさらです。接続には高密度Closed Cell発泡剤が有効かもしれません。 しかし、1階部分をポリシートで「気密良く」施工することはかなり難しいのです。 その２ 1階も2階と同様にタイベックシートを施工し、上下に接続して建物をすっぽり覆います。これで高い気密性を確保します。 それとは別に、1階の断熱材内側にVBを施工します。VB,VRには連続性は求められませんので、水蒸気圧が高い必要部分にのみ施工をすれば足ります。 その１の場合でも、1階の外壁にはタイベックを透湿防水シートとして施工していることが多いはずです。「あっさりその２を採用した方が得だよね」というのが20世紀末ごろの北米の発見でした。 Q8. 湿度の高さで考えると、住宅はVapor Barrier（VB） が必要かもしれないと思いましたが如何でしょう 北米Building Scienceは、住宅においてもVBを使用しない工法を推奨しています。 「住宅は湿度が高い」⇒冬場の相対湿度は、暖房している屋内は低く、冷えた屋外は高くなる傾向があります。しかし水蒸気圧で見ると屋内の方が高いので、水蒸気は熱力学第2法則に従って、屋内から屋外へと移動します。これは住宅に限りません。 その移動がDiffusion(水蒸気透過)で、これを防ぐのがVB、VRです。かつての北米と同様、日本ではいまだにVRでAir Barrier（以下、AB）を兼用することを考えています。しかしこの一見合理的な兼用のツケは、実は高いのです。 今回のセミナーの主題の一つは、様々な問題を起こす大量の壁内結露の原因はDiffusionではなくAir leakage(漏気)であることを明らかにしたQuirouette論文の紹介でした。その差は6：1400。論文は、漏気を止めることが重要なのだということを証明しました。 位置制限があるVBでは高気密化が難しいという現実があります。自分でやってみると分かりますが、想像を超えて難しい。 位置制限のないAB素材ですっぽり建物を覆う方が、コストが安く、精度も格段に高くなることを実証したのが、今日の北米の高い外皮性能です。VBは必要箇所にのみ使い、何より連続したABを優先することが、遥かに安くつくのです。 これは用途（住宅/一般建築物）、構造（W/S/RC）の別を問いません。 VRの使用を最小限に抑えることには、別の目的があります。壁内結露の発生をゼロにすることは不可能です。しかし、結露が発生したからと言ってすぐさま問題が起こるわけではありません。木材には高い水分保有能力があり、それは鉄骨より高く、CB造は木造に勝ることが知られています。大切なのはそれぞれの建物の含水許容量を上回らないようにすることで、乾燥を促進する工夫が必要です。 通気工法は外部への乾燥のための工夫です。通気工法を開発したのはカナダだと言われていますが、北米では内側への乾燥の工夫も怠りません。ポリシートとビニル系壁紙の使用を避けるのは、それらが室内側への乾燥を阻害するためです。 我が国における昨今の急激な夏季の高温多湿化は、それ以前に保たれていた平衡状態を崩す可能性があります。原理的には冷房地域のポリシート工法（断熱材の室内側にポリシートを施工する）は問題を起こします。急激な気候変化以前になんとかなっていた木材が、ある時点から悲鳴を上げる可能性は否定できないと考えます。 2020年度に発表された論文は、第3種換気システムを導入している場合の、冷房期における住宅の2階天井部分における大量の結露危険を指摘しています。

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