第53回GBJセミナー[講師の音声付資料] ESG投資とGRESB:サスティナブルなお金の流れを知ろう

2019年8月2日(金)開催 

第53回GBJセミナー

<募集時セミナー案内はこちら>

概 要: ESG投資とGRESB:サスティナブルなお金の流れを知ろう

日 時: 2019年8月2日(金)18:00-20:00

会 場: ヴォンエルフ株式会社1階 「プレイスW」

 

講師の音声付資料

 

1部 木下 泰 氏  (MS Investment, Inc.)

誰でもわかるESG投資と金融

金融の仕組み、お金の流れ、運用の世界を取り巻くESG投資への動きを説明

 

2部 高木 智子 氏 (CSRデザイン環境投資顧問(株))

機関投資家はどんな基準でESG投資をするのか?
グリーンビルディングはどう評価されるのか?

 

質疑

 

 

1部 木下 泰 氏  (MS Investment, Inc.)

 

2部 高木 智子 氏 (CSRデザイン環境投資顧問(株))

 

YouTubeでもご覧いただけます
2部【目次】
0:11 機関投資家はどんな基準でESG投資をするのか?

0:31 PRI署名機関

1:52 GPIFの例

6:08 情報がないと、正しく評価されない

7:54 GPIFの例: 開示情報を用いたESG指数によるパッシブ投資

9:15 不動産セクターを対象に含むESG評価

13:39 GRESBとは

15:54 GRESB:投資先の選定・モニタリングに利用できる指標

16:47 GRESBリアルエステイト参加者の推移

20:15 GRESB 投資家メンバー

21:20 2018年GRESB結果:総合スコア分布

23:31 日本参加者のスコアは向上

24:03 GRESBを使ったモニタリング

26:45 GRESBで評価されるグリーンビル要素

36:30 評価項目の例

41:51 グリーンビル認証の使われ方

44:22 EUタクソノミー

45:54 グリーンボンド

47:23 日本初の事例、海外事例

48:15 健康と快適性

48:44 WELL認証取得の経済的メリット分析

51:20 不動産価値への環境性能等の反映:現在と将来

 

 

Q&A

 

Q1. ESGへの取り組みが賃料アップ等の経済的メリットにどのくらいつながっているか。取組みをしなければ投資が集まらないというリスクにもつながると思うが。

 

グリーンビルディング認証を取った物件のの賃料が上がるとか、売却に有利であるとか、調査の結果は徐々に出て来ているが、日本ではまだそこまで感じている人は少ない。グローバルでも色々な調査研究結果が出されているが、実際の事業者からはあまり聞こえて来ない。どちらかというとグリーンによって経済価値を期待するより、あまり良くない物件を持ってしまうことによる価値の下落を避けるメリットの方、つまりグリーンプレミアムよりはブラウンディスカウントを回避する方のメリットを皆さん強く感じ、そちらに注目されていると感じる。

 

Q2. ビルを木造とした場合、どのように評価されるのか。評価がされていない場合、今後どのように評価されるのか?

 

木造ビルは大変先進的な取組みではあるが、ESG評価では、LCCO2が下がる等のポイントにはなるものの、評価全体からすると得点的にはあまり大きくない。ESG評価は、企業全体やポートフォリオ全体としての取組みを評価するものであり、単体のプロジェクトの取組みは埋もれてしまう。 一方で、例えば、プロジェクトファイナンスとして、グリーンボンドの発行や、SDGsの目標と紐づけてポジディブインパクト投資の推進につなげるなどの形で、資金調達を通じて取組みをアピールしていくこともできる。
(2015年のパリ協定後)石炭が座礁資産と呼ばれるようになったが、生成に多大なエネルギーを使うセメントは早晩使えなくなる、コンクリートのビルは今後建てられなくなる、という考えもヨーロッパでは広まりつつあるので木造の価値はその面でも評価されるのではないかと思う。

 

 

Q3. ESG投資は、『流行り』『ブーム』なのでしょうか?10年後には、別の考え方・何か違う枠組みが出てくると思いますか?

 

流行りではない。企業活動のの永続性に対するリスクを減らすという合理的な考え方がベースにある。 短期、ミクロでは、利益を最大化するということでよいかもしれないが、長期、マクロで見ると違う。 世界には解決すべき問題がまだまだあり、企業活動を永続させていくために目の前の問題を解決し、いかにリスクを減らして、地球や社会を持続可能なものにしていくという根底の考えは変わらないと思う。 これまで、少し特別な意識が高い人がやっている投資、という感じであったが、機関投資家が多くのお金を当たり前にESG投資に動かすようになると、「ESG投資」という言葉自体はなくなっている可能性はある。

 

 

Q4. 以前からあるEsco事業は評価の1指標となって、それ自身での投資を見込めなくなるのでしょうか?

 

Esco事業のようなものも、GRESBの中で、ある種評価をしてもらうことはできる。ポートフォリオの中のどのくらいの割合がEsco事業等を使って改善策の提案を受けているかとか、実際にどういう空調更新の取組みをしたかとか、というような形では大きなESG評価の中に組み込んで評価を得ることはできる。今日申し上げたのがすべてのESG投資の形ではないし、ブラウンディスカウントを回避するためには有効な投資手法となりうる。

 

 

Q5. GRESBは認証制度なのか?評価は点数式なのか?どのような結果が出てくるのか?

 

「認証」という言い方はしておらず、「評価をする」と言っている。 縦軸の「マネジメントと方針」で〇点、横軸の「実行と計測」で〇点という点数の結果が出て、その2象限のグラフにプロットされ、評価企業全体の中での位置づけが分かる。上位20%ごとに区切り線が入っており、それにより1スターから5スターのランクが決まる。スターはロゴとして与えられ、使用できる。 よく言われるのが、通信簿のようなものであり、ここに出ていることが透明性の確保となる。レポーティングツールとしての役割も高い。

 

   縦軸と横軸はどう分けられるのか。

 

設問が60程度あり、縦軸、横軸どちらのポイントになるかが決まっている。 横軸は、エネルギー計測を行っているか、環境認証をとっているか、テナントの取り組みなどが評価される。縦軸は、委員会など組織体制を整えて取り組んでいるか、ポリシーをきちんと掲げて知らせているかなどの評価となる。

 

  大きな会社のグループの不動産会社に所属しているが、評価を受ける単位は、グループ全体となるのか、子会社でもよいのか?

 

投資家が投資の対象を判断するものとなるため、投資のできる単位であればよい。

 

 

Q6. コミッショニングとは何か?

 

既存の機器を新しいものに取り換えるのではなく、現在の設備の状況をモニタリングして、チューニングだけで最適調整し、効率的な運用に変えていくこと。

 

 

Q7. GRESBの評価を非公開にしたいという会社もあるのか?

 

GRESB評価に参加したこと自体は開示されるが、どの会社が何点とったかは、非公開で、GRESBの投資家メンバーにならないと見られない。初回は試しに取り組んでみたという場合に、初回の結果は非開示、ということもできる。

 

  自慢したい会社はどうすればよいか?

 

プレスリリースをする。

 

 

Q8. グリーンビルディング認証には、CASBEE、LEED、DBJのグリーンビル認証の3つがあると思うが、GRESBの評価の中で違いはあるのか?

 

GRESBはGBCIの傘下となった。LEED認証団体と同じではあるが、独立性を保った子会社として運営している。1物件に対する評価は、いずれの認証でも、グリーンビルディング認証を取っているというということでは同じ評価となる。 LEEDの良さは、基準の高さとか、プロセスの厳格さ、技術的なバリデーションがしっかりしていること、などで、グローバルで最も信頼性が高いと感じる。DBJの評価は、現在は取りやすいが、だんだん厳しくなっていくと予想している。

 

 

Q9. これからの日本は、1、2年でどのような動きが考えられるか?何かトピックがあれば教えてください。

  グリーンボンドは通常の社債と調達レートが異なるのか?

 

昨年(2018)は、日本におけるESG投資元年と言える。日経新聞でも「ESG投資」という言葉は、以前はほとんど出てこなかったが、昨年位から毎日のように出てきている。 ESG投資は、高邁な理想にまい進という見方がされているが、そうではなく、いかにリスクを減らして経営を持続可能なものにするかというところの見方という本質的な理解はまだ浸透していないので、合理的で理性に基づいた手法として、議論されていき、よりESGにセンシティブな企業への投資が進むことを期待している。2、3年かかるかもしれない。 グリーンボンドはどのように価値が変化していくのかというと、すぐには具体的なレートは変わらないのかもしれない。しかし、投資は同じレートの場合、リスクの低い方を選ぶため、最終的にESGの取組みをする発行体は資金が調達しやすくなり、結果的にレートが下がることが期待できる。投資判断に際しては自分が好むものではなく、皆が何を好むかを考えなければならない。

 

不動産という視点で言うと、気候変動に対する感度が高まっていく。日本でも異常気象を体感しているが、グローバルでは、危機感が本当につよい。ZEB、再生可能エネルギー、省エネビルなどにさらに資金が流れていく。ビル内部においては、健康快適性はアピールしやすく、より進んでいくと考える。

 

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